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設立2年で選手権制覇の「Red Monsters」安定した仕事をしながらプロを目指せる特別な環境

仕事とバスケットボールを両立しながらプロの舞台を目指す——。そんな新しい挑戦の場として2024年4月に立ち上がったRed Monsters(鹿児島県/以下レッドモンスターズ)が設立わずか2年目で全国の頂点に立った。今回はこのチームの成り立ちや特徴を、ヘッドコーチや選手の声を交えて紹介する。

セカンドキャリアも見据えた支援を 株式会社Wizが架けるプロへの道


レッドモンスターズは、Bリーグ2部(B2)に所属する鹿児島レブナイズのセカンドチームだ。同チームに加えて、株式会社Wiz、鹿児島県バスケットボール協会の三者が共同で立ち上げた国内でも珍しいとされるセカンドチームプロジェクト。「Bリーグの選手を目指す若者の受け皿となること」と、「セカンドキャリアも安定した生活が送れるようにー」と選手のキャリア形成支援を目的に設立された。

Bリーグにも「練習生」という制度は存在し、実際に練習生としてプレーしながら選手契約に至る事例も少なくない。しかし、練習生には報酬は発生しないため、自ら練習の合間に金銭を稼ぐ必要があったり、家族による援助があったりということを、練習生を経験したBリーガーは語っていた。

単純な計算でも、一人暮らしであれば、家賃、食費、光熱費がかかり、バッシュなどの備品代も考えるとかなりの額が必要となる。生半可な覚悟では乗り越えられない、厳しい現実がそこにある。

そんな中、レッドモンスターズの選手たちは、Wiz鹿児島支社の正社員として法人向けIT営業に従事しながら、終業後に週4〜6日、約2時間の練習に励んでいる。ヘッドコーチには鹿児島レブナイズでキャプテンを務め、背番号41番が永久欠番にもなっている松崎圭介氏が就任した。安定した収入を得ながら、練習環境にも恵まれた中でプレーができる選択は、プロを目指す選手たちにとって夢へと繋がる新たな架け橋となっている。

チーム力が導いた、設立2年目での全国制覇

「Red Monsters」というチーム名は、鹿児島レブナイズの原点「鹿児島レッドシャークス」にちなんで命名された。ユニフォームも赤色を基調としたデザインになっていて、目を見張るインパクトがある。

そのユニフォームを纏った選手たちが躍動したのは、2026年2月21日から23日にかけて京都府で開催された「第8回全日本社会人バスケットボール選手権大会(京都大会)」。設立初年度での挑戦となった昨年は、準決勝で敗れたものの、今季は危なげなくトーナメントを勝ち上がり、決勝も85-67で勝利を収めた。設立2年目で初優勝を成し遂げる快挙だった。

レッドモンスターズはチームの連動性が優れており、ディフェンスから試合の流れを組み立てるチームだ。オフェンスでもスムーズなボールムーブメントを展開し、Bリーグの試合を見ているような感覚にさせられる。

組織力が光っていたチームだったが、実は大会前に松崎ヘッドコーチ(HC)はある課題を感じていたと明かす。「今年のチームは昨年よりも個のレベルは高かった。ただ、チーム力という部分で少し劣っていた」

今季のチームには留学実績選手として、横浜エクセレンスのB2昇格にも貢献したキエキエ・トピー・アリなど学生時代から名前を轟かせていた選手たちも多数在籍する。

しかし、バスケットボールは個々のレベルが高くても成り立たないチームスポーツだ。チームとして繋がってプレーすることにより、本来の力が相乗効果となって現れる。そのチームを一つにまとめ上げたのが、キャプテンの山西大翔(#11)だ。

「新チームになってメンバーが半数以上入れ替わりました。既存メンバーと新規メンバーがしっかりコミュニケーションを取り合って、最後に一つのチームとしての形をつくれた」(山西)松崎HCも「チームが本当に一つとなって戦い抜けたことが優勝できた要因だと思っています」と笑顔を見せる。

社会人カテゴリーに見られる特徴は練習に割ける時間の確保が難しいことだ。実業団はまだしも、クラブチームとなると、仕事もバラバラであることが当たり前で、メンバーが揃わないことも珍しくない。

その中でレッドモンスターズは、チーム全員で練習することができることが強みであり、それゆえにチーム力も磨くことができたのだろう。

 優勝の勢いそのままに臨んだ3月の「高松宮記念杯 第8回全日本社会人バスケットボールプレミアムチャンピオンシップ(熊本大会)」でも、レッドモンスターズは存在感を示した。初戦でSB-2所属のLake Blue(滋賀県)を80対67で下し、2回戦ではSB-1の横河電機WILDBLUEに73対78と惜敗しベスト8。格上の実業団チームとも渡り合い、チームの実力を改めて証明した。

仕組みが生んだBリーガーたち

設立からわずか2年で、成果は数字に表れている。

2024年4月からレッドモンスターズに加入した秋山慶哉(現・仙台AIR JOKER.EXE)は活躍をトップチームである鹿児島レブナイズから認められ、2024年8月に練習生として参加し、2024年11月に選手契約を交わした。結果的にプレータイムを得るには至らず、双方合意の上で契約解除となったが、Bリーグの厳しさを肌で感じた経験は、その後のキャリアにとって確かな財産となったはずだ。

川畑颯太郎もレブナイズで練習生としての経験を積んだ。その努力が実り、2025-26シーズンより山形ワイヴァンズ(B2)と選手契約を締結。平均プレータイムも9分36秒を獲得し、平均1.9得点を記録。Bリーグの舞台でも戦える選手を輩出した。

武藤修平はレブナイズでプロキャリアを一旦終えた後も、レッドモンスターズでプレーを継続。プロキャリアを半ば諦めかけていたタイミングの2025年11月に再びレブナイズとの選手契約に至った。しかも、Wizの社員として仕事も続ける決断も下し、Bリーグの舞台に舞い戻った。

仕事をしながらプロを目指せる環境が、複数のBリーガーを着実に生み出している。

「人間性もステップアップできるように」松崎HCが求める社会人に必要なスキル

松崎HCが選手たちに求めるのは、バスケットボールの強さだけではない。優勝杯を受け取った表彰式終了後、選手たちは自チームのベンチを丁寧に直していた。「椅子の片付けといった小さなことも含め、人間性という部分でもステップアップできるように。それが今後のキャリアにつながっていけるチームでありたい」と松崎HCが語れば、山西キャプテンも続ける。

「仕事もバスケも、両方できる方がかっこいい。会社の人に融通をきかせてもらっている。その人たちへの恩返しの気持ちで戦いました」とバスケットボールに懸ける思いを口にした。

Bリーグチームの鹿児島レブナイズとも連携し、安定した仕事とバスケットボールに満足いくまで打ち込める環境の共存を強みとするレッドモンスターズ。Bリーグ選手を輩出するといった目的も達成しながら、全国大会での優勝も手に入れた。まだ夢を諦められない選手たちにとって、Red Monstersの在り方は社会人バスケットボールの新たな可能性を生み出すことだろう。