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Columun SBL/Documentary

“存続危機”からの再出発 青森CYGNUS NEXTが地元国スポに懸ける思い

国民スポーツ大会(国スポ)は、毎年都道府県の持ち回りで開催される国内最大の総合スポーツの祭典だ。第80回を数える今年(2026年)は、青森県で開催されるが、そこに向けて2019年に発足されたチームが存在する。そのチームは一度は存続の危機に陥ったが、関係者たちの奮闘により、2025年に青森CYGNUS NEXT(シグナスネクスト)として再出発を果たした。チーム再建時の苦労を深掘りながら、地元国スポへの思いや、チームの実情を聞いた。

「このまま活動を無下にしたくない」
元5人制プロ・下山貴裕選手の奮闘

青森CYGNUS NEXTは、男子東北SB2リーグに所属し、昨季(2024-25シーズン)は、東北リーグで初優勝にも輝いた実力のあるチームだ。アウトサイドの攻撃が特徴的で、サイズが小さい分、走力で弱点を補うスタイル。今季も8月2日のリーグ戦終了時点で4勝1敗を記録し、首位に立っている。

チーム名につけられた“CYGNUS”(シグナス)は、青森県の県鳥・白鳥にちなみ、「青森県を背負って羽ばたくチームになる」との思いを込めて名付けられた。「ネクスト」にも、「次の世代も白鳥のように羽ばたいてほしい」と前進のチーム名を引き継いだ。

「前進のチーム」から現在のチームに移るまでは、多くの紆余曲折が存在し、多くの人たちの支えがあり、現在の活動へとつながっている。その中でも欠かせない人物が、元5人制プロ選手で、青森CYGNUS NEXTの立ち上げとチーム運営等を担当する下山貴裕(以下、下山貴)選手だ。

青森県出身の下山貴選手は、2014-15シーズンから青森ワッツでプロ生活を始めると、秋田ノーザンハピネッツ、岩手ビッグブルズ、三遠ネオフェニックスなどでプレー。プロ選手引退後の2022年から、前進のチームに加入し、地元開催の国スポに向けて練習に励んだ。

「青森ワッツ在籍時から2026年に青森国スポが開催されることを知っていました。僕もどこかしらのタイミングで、国スポに向けて地元でプレーしたいと考えていました」

しかし、地元チームでプレーを続けていた矢先、チームの存続危機について知らされた。

「国スポのために、選手やスタッフは頑張ってきました。このままその活動を無下にしたくないという思いがありました」

チームは青森県出身の選手がほとんど。地元を愛し、バスケットボールが大好きなメンバーが、青森のため、チームのため、そして自分自身のために活動し、「青森からでも勝てるチーム」を目指していた。

下山貴選手にとっても顔馴染みのメンバー。このメンバーでバスケットボールができる環境を残すためにも、チームを失うわけにはいかなかった。

そこからは、新しいチームを立ち上げるために奔走した。プロでの経験や、知識、ノウハウやつながりを総動員。スポンサーも集めながら、2025年5月29日に、一般社団法人アルビレオの立ち上げにこぎつけた。

「選手だけではなく、スタッフも『どうやったら勝てるんだろうか』という熱い思いを持って取り組んでくれています。そうした姿にも共感をしてくださり、代表を引き受けてくださった髙橋辰佳さんとも出会うことができました」

髙橋代表理事も、大学までバスケットボールに取り組んでいたが、卒業後は観戦するだけにとどまっていた。転機が訪れたのは、2025年2月28日から3月2日に青森県で開催された、高松宮記念杯第7回全日本社会人バスケットボールプレミアムチャンピオンシップだ。

「当時は青森県で大会が開催されることすらもわかっていなくて、大会があるのもバスケ好きの義理の両親から聞いたくらいです。その大会が終わってまもなくして高校時代の先生から『相談したいことがある』ということでお会いして、前チームの状況と新チームに関する話を聞きました」

しかし、その時の反応は「荷が重い」であったと髙橋代表理事は明かす。それでも最終的に引き受けたのは、下山貴選手の働きが大きい。

「下山(貴)君が作った資料を初めて見た時に、まだ先が見えない中でここまで動いて、ユニフォームのデザインや、スポンサーになってくれる企業にも了承を得ているとかも知って、『ここで断っては他に誰が手助けできるのだろうか』と思い、決心しました」

とはいえ、代表理事を引き受けるまで、顔を合わせた選手やスタッフは少なく、髙橋代表理事の中にも「クラブは少し緩い部分もあるのかな」という印象があったという。

それでも2025-26シーズンの初戦を見た時に印象がガラッと変わった。

「真剣にやっている姿に熱意を感じて、私自身にも熱が出てきましたね。引き受けて良かったなと今は思っています」

メディアの力で認知度向上
「練習に参加できる選手が増えた」

国スポ強化チームと言えど、満足にチーム練習ができているわけではない。基本的には、毎週日曜日の一度のみで、昨季は仕事の関係で練習に参加できない選手も多かった。時には学生にも練習に入ってもらい、なんとか対人メニューをこなした時もあった。

それでも2026年は多くの選手が練習に参加できるようになった。チーム内でどのような変化があったのだろうか。

「青森CYGNUS NEXTが国スポの強化指定チームだということをメディアで取り上げてもらいました。それを職場の上司の方が見てくださり、『応援しているよ』と声を掛けていただいたり、仕事を調整をして下さったりして、練習に参加できるようになった選手も中にはいます」

「チームの状況を県内の方々に知っていただくこともそうですし、職場の方々にも知っていただくことが大切だと思っています。メディアの皆さまのお力をお借りして、今シーズンは少しでも選手の力になれたのかなと思います」と、下山貴選手は胸を撫で下ろす。

SNSによる発信も怠らない。現在、インスタグラムのフォロワー数は約1540人。スポンサー紹介や、活動の記録などを日々発信している。

「プロチームのように、メインスポンサーさんがいて運営しているわけではないので、運営の難しさもあります。サポートしていただいているスポンサー様からのスポンサー費で活動しているチームなので、スポンサーさんを紹介することで、その企業を知ってくださる方が増えたり、就職のきっかけになったりするかもしれません。そこから、うちのチームに入りたいと思ってくれる人も出てくるかもしれません。僕自身がプロで経験してきたことを生かしながら、いろいろと工夫して取り組んでいます」

チームホームページの選手紹介の写真にも、その工夫が見られる。

例えば中野宥斗選手(#88)を見てみると、隆隆とした肉体美に目が釘付けになる。元Bリーガーの下山貴選手や、下山大地選手(以下、下山大)に注目を集めたいのはもちろん、バスケットボールを知らない人に対しても、興味を持ってもらえるような工夫を施している。

「身体がキレキレな写真をチョイスしているのは僕です」と下山貴選手は笑う。

「『そもそもこのチームには誰がいるんだ』っていうところから、まずは選手のことをそれぞれ知ってほしいと思っています。試合を見てもらうきっかけとして、言い方は悪いですけど悪用させてもらっています(笑)」

「SNSって若い人には親しいツールですよね。いろんな形で頑張っている地元の選手がいるってことを知ってもらいたいとも思っています」

チームの立ち上げや、チーム運営、リクルートや、SNS周りなどを一括して行っているからこそ、選手の魅せ方や、チーム露出のさせ方など細部に「チームを知ってほしい」との思いが込められている。

「地元でやれるからには優勝を」
長年の準備期間の成果発揮へ

2026年8月29日から30日にかけて行われた、令和8年度国民スポーツ大会東北ブロック大会兼第53回東北総合スポーツ大会バスケットボール競技成年男子(東北ミニ国スポ)では、秋田県代表と岩手県代表に敗れ、2日目の決勝トーナメント進出を逃した青森県代表。ミニ国スポには当チームから、選手8名、スタッフ6名が選ばれた。

今季はミニ国スポの結果に関係なく国スポへ出場できるが、さらに力を蓄えなくてはならない。長年準備してきた大舞台が目の前にまで迫っている。下山貴選手はどのような思いで国スポに挑むのだろうか。

「僕自身も青森県出身ですが、メンバーのほとんどが青森県民です。みんな地元に熱く、青森国スポに懸けている思いも強いです」

「昨季のチャンピオンシップの決勝戦が、JR東日本秋田PECKERSさん(秋田県)と山形クベーラさん(山形県)で、東北もかなりレベルが高いです。その中に青森も食い込んでいきたい。簡単な道のりではないないとわかっているんですけど、地元国スポをやれるからには優勝を目指したいです」

切磋琢磨するチームメイトの中には、下山貴選手や、下山大選手がプロ選手として活躍していた姿を観客として見ていたメンバーもいるという。

「今はチームメイトですが、憧れていた選手とも一緒にプレーできたり、昔からの顔なじみのメンバーともまた一緒にプレーできることはなかなかないです」

そう語る下山貴選手は埼玉県在住で、普段はチームのスポンサーでもある「社会福祉法人青い森」で法人運営の仕事に携わりながら、週末は青森へ通い、練習に参加している。

「このチームが存続していなければ、今のメンバーでバスケットボールをやれなかったかもしれない。髙橋代表をはじめ、スポンサーの皆さま、ここに至るまで支えてくださった方々、そして応援してくださっている方々には、本当に感謝しかないです」「プロではないけれど、社会人でこんなにガチンコになって、他県とバスケットボールの試合をすることはなかなかないと思うので、本当に貴重な機会をもらっています」

一方で、国スポ後について下山貴選手は「どうなるかわかりません」と正直に話す。

「現在支援してくださっているスポンサーさんや、今プレーしてくれている選手が、来シーズンも続けてくれるという保証はどこにもありません。スポンサー企業の皆さまも会社の経営状況がありますし、選手も家庭や自身の仕事の都合など、来シーズンも同じ環境で活動できるとは限りません。

ですが、思いとしては、社会人の上のレベルでプレーできる受け皿でありたい。そして、県内の子どもたちが『このチームでプレーしたい』と思えるような、魅力のあるチームにしていきたいです。今いる選手にも『このチームでプレーし続けたい』と思ってもらえるように、そして、このチームをこれからも存続させていけるように、頑張っていきたいです」と、今後への意気込みを語る。

10月10日から20日にかけて行われる国スポ。バスケットボールは10月15日(木)から始まる。

一度は存続の危機も経験したチーム。国スポのために始まったチームに、多くの人の思いが加わり大きく成長した。これまでの感謝と自信を翼に変えて、いよいよ地元開催の国スポへと挑む。